東京港野鳥公園の(公財)日本野鳥の会レンジャーが、公園で観察した野鳥や自然についてお伝えします。

2018年頃からは、通常の管理作業の合間に草地やヨシ原、湿地の藪を覆うクズなどのツル植物の除去、湿地再生、草地再生に努めてきました。

例えば、眺望ゾーンも兼ねたネイチャーセンター横のミニ生態園周りは、小さなお子様でも水辺が観察できるように目線にまであったクズ原を除去し、草丈の低い草地(低茎草地)や湿地(休耕田模倣地)への転換を行ってきました

ミニ生態園から東淡水池の眺望も変わりました。
地点A_P6070011
以前の様子
C (2)
最近の様子

ミニ生態園にある東保護区入り口も景観が変わりました。
P8160012
以前の様子
A (2)
最近の様子

保護区内もクズ原を整備して、数年をかけてオギ、ススキの茅場へ転換しました。
PA280461
保護区内の管理道周辺の様子

もちろん、クズは在来種で、クズを利用する生き物もいるので、全て無くす考えはありません。
眺望ゾーンとしての視界確保をすべき所や、茅場として再生できる可能性がある所でのみ除去をして、林縁にあるクズによる「マント群落」は保存してあります。
※管理作業をする際は、既存の管理計画に加え、①お客様目線(観察支障の有無など)、②生き物目線、③安全管理を軸としています。

また、都内では減少傾向にあるされ、東京都レッドリスト2020見直し版(区部)で絶滅危惧IA類(CR)のセッカ、絶滅危惧IB類(EN)のホオジロを誘致すべく、多摩川河口域と同様の草地へ転換するという狙いもあります。

その結果が通じているのか、1990年から現在(昨日2024/3/26)までのデータを見ると、以下のようなグラフが出ました。
sekka_keinen
セッカの観察日数
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セッカ
hojiro_keinen
ホオジロの観察日数
32a6645e
ホオジロ
どちらも似たような傾向が出ていますが、最近になって観察できる日が増えてきています。
※開館日のレンジャーによる確認の有無の集計です。

減っていた期間は、東保護区内のヨシ原を泥湿地と調整池に工事した頃から減少しているようにも見えますし、当時の気象条件(多雨で草地水没?)、管理対象の違い(湿地、水辺優先?)、あるいはクズ原が拡大したためか、などと推測もできます。

いずれにしても、観察日数が増えてきているので、結果としては順調のようです。

なお、草地転換のため、樹林や藪へと遷移が進んでしまったところを一時的に除去することがあります。
例えば、今冬に実施した前浜干潟側の生垣剪定と実生木伐採も、育ちすぎた生垣の下に実生木が増え、それらが日陰を作り、ヨシ原が減ってきていたため、今回、造園業者さんに整備していただきました。
次第に生垣や切り株から徒長枝が伸び、ゆくゆくは、拡大したヨシ原と所々にある灌木の景色になればと考えております。
基本的には、「今年はここ。来年はここ」というように、例えばヨシ原でもゾーニングをしながら、手を入れて、全てを無くすようなことはしないようにしています。

こうした作業、整備で観察のご不便をおかけすることがあるかも知れませんが、ご理解のほど、よろしくお願いいたします。

本日、レンジャーが確認した野鳥は以下のとおりです。

オカヨシガモ、ヒドリガモ、マガモ、カルガモ、ハシビロガモ、コガモ、ホシハジロ、キンクロハジロ、スズガモ、カイツブリ、カンムリカイツブリ、キジバト、カワウ、アオサギ、ダイサギ、コサギ、クイナ、オオバン、コチドリ、タシギ、イソシギ、ウミネコ、ミサゴ、トビ、ノスリ、カワセミ、コゲラ、モズ、ハシブトガラス、シジュウカラ、ツバメ、ヒヨドリ、ウグイス、エナガ、メジロ、ムクドリ、シロハラ、アカハラ、ツグミ、ジョウビタキ、スズメ、ハクセキレイ、カワラヒワ、ホオジロ、アオジ、オオジュリン(46種)

1号観察小屋の近くの草刈り跡では、ジョウビタキのメスが採食していました。DSCN5774
【ジョウビタキ】
何度も地面に下りて昆虫を捕まえており、よく見るとマルカメムシを食べていました。人間からするとマルカメムシはかなり臭いのですが、気にならないのか、何匹も捕まえていました。
※一般的に鳥類の嗅覚は弱いというイメージですが、これは種類にもよるようです。ジョウビタキはどうなのでしょうか?

東淡水池や潮入りの池の上空では、ツバメが飛んでいました。DSCN5792
【ツバメ】
草地を飛んだり、水面すれすれを飛んでいる姿が観察できました。

東淡水池の島では、ホオジロが見られました。DSCN5779
【ホオジロ】
昨日はオスも確認されていましたが、今日はメスが1羽で行動していました。

2号観察小屋からは、コガモ、ハシビロガモ、ヒドリガモ、キンクロハジロなどの群れが見られました。DSCN5751
【コガモ】
コガモは目をとじて、休んでいました。

砂礫地の草むらには孵化したばかりのカマキリたちがいました。
DSC_0924
【カマキリの幼虫】
周囲ではオオカマキリの卵鞘(らんしょう)が多く見られたので、本種の幼虫と思われます。
暖かい日が多くなり、小さな生きものたちも活発に動き始めました。是非、足元にいる彼らも探してみてください。

現在、潮入りの池と前浜干潟の間にあるコアジサシ繁殖誘致のための砂礫地の整備を進めています。

整備と言っても、毎年恒例の除草作業と周辺のヨシ刈りです。
B (1)
地点A 作業前
B (2)
地点A 作業後
A (1)
地点B 作業前
A (2)
地点B 作業後
防草シートを敷いた上で砂利が敷かれていたのですが、年々、土ぼこりが溜まって、そこに草が生え、実生木も生える上、防草シートの下からもヨシ、オギ、ススキ、残っていたハリエンジュが生えてシートを貫き、持ち上げ、それをカラスが引っ張り…という現状があります。

一方で、すぐに何らかの改修ができませんし、整備をせず、草丈の高い草地や、実生木やハリエンジュなどの樹林に遷移してしまうとコアジサシ、過去に繁殖事例のあるコチドリも利用しにくくなります。

コアジサシ自体、昨年はほとんど飛来していませんでしたが、再び多くが飛来しても、利用できる場がなければ利用できないので、今できる整備に努めています。
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アメリカセンダングサというタネが衣類にくっつく「ひっつき虫」で、手袋や衣類の隙間に入ると痛くて厄介な草が主に生えています。
それを抜いて、山にして、抱えるか、クズで作った紐で縛って砂礫地の外に搬出しています。
以前、一時期はその草の量の多さゆえに効率化を目指してトラクターや刈払機も導入しましたが、今回は結局、草抜きが一番きれいで、回収もしやすいということになり、草抜きをメインで作業をしています。
昨秋に前浜側の砂礫地だけ除草が済んでいたので、その分、負担が少ないこともあります。

今後も試行錯誤を繰り返しながら、より効率的な保全整備を目指し、コアジサシ、コチドリの繁殖成功を期待したいものです。
作業をしていることで観察の支障となることもあるかも知れませんが、ご理解のほどよろしくお願いいたします。

【砂礫地関連の過去の投稿】
・2023年05月11日 コアジサシのデコイを設置しました
・2022年04月28日 コアジサシのデコイを設置しました
・2021年10月16日 砂礫地を整備中です

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