潮入りの池の1号観察小屋から水門の方を見ると水面にオレンジ色の杭が何本か刺さっています。
既にお気づきの方もいらっしゃるかも知れませんが、2023年6月より、とある実験をしております。

【1号観察小屋から見た水門側に見える杭(右下)】
実験とは、「なぜ潮入りの池に貝類がいないのか」を確認するための検証実験です。
レンジャーは毎年5月、8月に、潮入りの池と前浜干潟にて、定めた調査の側線(6カ所:前浜2カ所、潮入りの池4カ所)・測点(3地点×6カ所)において、干潟にいる底生生物(甲殻類、ゴカイなど)を調べています。

【調査で泥採取をしている様子】
ところが、2017年~2019年にかけ、急にとある種が減ったり、逆に別の種が増えたり、という大きな変化が起きました。
そして、2020年以降は、干潟の底生生物が激減、という状況になっています。
参考までに、2015年度から今年度までの結果をグラフにしました。

【アサリの経年変化】
アサリはこの数年で激減していることが分かります。
他の二枚貝は元々個体数が少ないのですが、それぞれ増減の波があり、右肩下がりの傾向が出ています。

【シオフキガイの経年変化】

【ヒメシラトリの経年変化】

【ホトトギスガイの経年変化】
【ヤマトシジミの経年変化】
当公園は人工潟湖干潟の構造で、水の循環が外洋と比べると悪いのですが、豪雨に際に一時的に淡水化が進んで、アサリが減って、淡水~汽水を好むヤマトシジミが大きく増えているわけでもありません。

【ミズヒキゴカイの経年変化】
汚濁や貧酸素に強く、過酷な環境でも耐えられるタフなゴカイと言われるミズヒキゴカイは、高密度で確認しています。
全く干潟の生物がいないわけでもありません。
この二枚貝激減の現象に連動するかのように、干潟で採食をするシギ・チドリ類、越冬カモ類のうちのハジロ属(スズガモ、ホシハジロ、キンクロハジロ)も見られなくなってきています。
その状況で、専門家のご協力を得て、以下の仮説のもと、二枚貝を保護し、増やせる道具(網の中に軽石が入っているマット)を使って検証実験をしてきました。
①二枚貝の稚貝が定着しなければ、そもそも周辺から稚貝が発生・供給されていないか
②二枚貝が途中で死ねば、水温上昇、酸欠、低栄養などが問題か
③二枚貝が大きく育てば、アカエイや水鳥(ハジロ属)などの捕食圧が高いか

【設置しているマット】
昨夏から今冬にかけて設置したので、順調にいけば、アサリなどの二枚貝が数ミリサイズに育っているはず、として、今月半ばに確認しました。
その結果、アサリは7mm程度のものが数匹、他の二枚貝もわずかに確認しましたが、極めて少ない状況です。
一方で、岩場や護岸、杭などに付着するホトトギスガイや、(外来種)コウロエンカワヒバリガイは、浅場に設置したマットには多く付着し、常に水没する場所に設置したマットには個体数が少ない結果が出ました。
このことで、どうやら干潟に潜る二枚貝は「①そもそも供給がない」可能性が出てきました。
死骸(貝殻)も少ないことから、「②水質が原因」ではなさそうという可能性も考えられます。
2019年の大型台風のように大きなイベントが生じると、減少して、回復に時間がかかるとも聞いています。
このマットは継続して設置するので、今後、周辺のポテンシャルが回復すれば、このマットの中でも増えてくる可能性もあります。
また、今、マットの中にいるアサリなどもそのまま保護することで、捕食圧を受けずにここで産卵をすれば、稚貝たちが増えてくることに期待もできます。
まだ継続して観察する必要がありますが、今後の干潟再生・保全対策を進める上での状況把握として、現状の調査結果をここでご報告いたしました。
干潟に打ち込んでいるオレンジ色の杭についても、ご理解のほど、よろしくお願いいたします。
既にお気づきの方もいらっしゃるかも知れませんが、2023年6月より、とある実験をしております。

【1号観察小屋から見た水門側に見える杭(右下)】
実験とは、「なぜ潮入りの池に貝類がいないのか」を確認するための検証実験です。
レンジャーは毎年5月、8月に、潮入りの池と前浜干潟にて、定めた調査の側線(6カ所:前浜2カ所、潮入りの池4カ所)・測点(3地点×6カ所)において、干潟にいる底生生物(甲殻類、ゴカイなど)を調べています。

【調査で泥採取をしている様子】
ところが、2017年~2019年にかけ、急にとある種が減ったり、逆に別の種が増えたり、という大きな変化が起きました。
そして、2020年以降は、干潟の底生生物が激減、という状況になっています。
参考までに、2015年度から今年度までの結果をグラフにしました。

【アサリの経年変化】
アサリはこの数年で激減していることが分かります。
他の二枚貝は元々個体数が少ないのですが、それぞれ増減の波があり、右肩下がりの傾向が出ています。

【シオフキガイの経年変化】

【ヒメシラトリの経年変化】

【ホトトギスガイの経年変化】

【ヤマトシジミの経年変化】
当公園は人工潟湖干潟の構造で、水の循環が外洋と比べると悪いのですが、豪雨に際に一時的に淡水化が進んで、アサリが減って、淡水~汽水を好むヤマトシジミが大きく増えているわけでもありません。

【ミズヒキゴカイの経年変化】
汚濁や貧酸素に強く、過酷な環境でも耐えられるタフなゴカイと言われるミズヒキゴカイは、高密度で確認しています。
全く干潟の生物がいないわけでもありません。
この二枚貝激減の現象に連動するかのように、干潟で採食をするシギ・チドリ類、越冬カモ類のうちのハジロ属(スズガモ、ホシハジロ、キンクロハジロ)も見られなくなってきています。
その状況で、専門家のご協力を得て、以下の仮説のもと、二枚貝を保護し、増やせる道具(網の中に軽石が入っているマット)を使って検証実験をしてきました。
①二枚貝の稚貝が定着しなければ、そもそも周辺から稚貝が発生・供給されていないか
②二枚貝が途中で死ねば、水温上昇、酸欠、低栄養などが問題か
③二枚貝が大きく育てば、アカエイや水鳥(ハジロ属)などの捕食圧が高いか

【設置しているマット】
昨夏から今冬にかけて設置したので、順調にいけば、アサリなどの二枚貝が数ミリサイズに育っているはず、として、今月半ばに確認しました。
その結果、アサリは7mm程度のものが数匹、他の二枚貝もわずかに確認しましたが、極めて少ない状況です。
一方で、岩場や護岸、杭などに付着するホトトギスガイや、(外来種)コウロエンカワヒバリガイは、浅場に設置したマットには多く付着し、常に水没する場所に設置したマットには個体数が少ない結果が出ました。
このことで、どうやら干潟に潜る二枚貝は「①そもそも供給がない」可能性が出てきました。
死骸(貝殻)も少ないことから、「②水質が原因」ではなさそうという可能性も考えられます。
2019年の大型台風のように大きなイベントが生じると、減少して、回復に時間がかかるとも聞いています。
このマットは継続して設置するので、今後、周辺のポテンシャルが回復すれば、このマットの中でも増えてくる可能性もあります。
また、今、マットの中にいるアサリなどもそのまま保護することで、捕食圧を受けずにここで産卵をすれば、稚貝たちが増えてくることに期待もできます。
まだ継続して観察する必要がありますが、今後の干潟再生・保全対策を進める上での状況把握として、現状の調査結果をここでご報告いたしました。
干潟に打ち込んでいるオレンジ色の杭についても、ご理解のほど、よろしくお願いいたします。