東京港野鳥公園の(公財)日本野鳥の会レンジャーが、公園で観察した野鳥や自然についてお伝えします!!
◆ 開園日毎日17時30分以降に更新中 ◆

カテゴリ: 保全管理レポート

水辺の確保を目的に造設したネイチャーセンター隣の小池ですが、造設してから3ヶ月ほど経ちました。
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この池を造設する以前にも池があり、”カニ池”と呼ばれていたそうです。
以前の呼び名に倣い、この池も”カニ池”と呼ぶことにしました。

カニ池にいる生きものは度々ブログでも紹介していますが、経過報告として、改めてカニ池の生きものを紹介できればと思います。
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【アカテガニ】
アカテガニだけでなくベンケイガニも確認しています。
今までアカテガニとベンケイガニは雨天時や産卵期に園路や観察小屋で遭遇する程度だったので、定常的に観察できるようになったのは嬉しいです。
カニたちは奥の水際で採食していることが多いです。

トンボたちもよく確認されています。
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【アオイトトンボ】
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【アキアカネ】
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【シオカラトンボ】
アキアカネは産卵を、シオカラトンボは産卵とヤゴも確認しています。来年はこうしたトンボたちの羽化も期待できそうです。

また水中に網を入れると…。
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【ギンヤンマ/ヤゴ】
ギンヤンマのヤゴもいました。カニ池の造設時期を考えると、おそらく東調整池からフトイなどの抽水植物を移植した際に一緒にくっついて来たものと思われます。
さらにヤゴだけでなくこんな生きものもいます。
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【ハイイロゲンゴロウ】
1cmほどの昆虫で、水中を活発に泳いでいます。
ゲンゴロウと聞くと珍しいように思えますが、このハイイロゲンゴロウは都心でも見かけるたくましい種類です。

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【アズマヒキガエル】
たまにアズマヒキガエルも池にやってきています。
その他、写真はありませんがスズメが水飲みに訪れているのも見かけました。

このように池としては小さいですが、様々な生きものたちがカニ池を利用してくれています。
ネイチャーセンターにお越しの際には、ぜひカニ池を覗いてみて、どんな生きものがいるか探してみてください。

昨年度設置したアカミミガメ駆除の日光浴トラップですが、捕獲効率を上げるために、新たに4号観察小屋前の西淡水池に追加設置をいたしました。
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【日光浴トラップ】
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【4号観察小屋からの景観】
アカミミガメは在来生態系への負の影響が懸念されていることから、2023年6月1日より、条件付特定外来生物に指定されました。
当園におきましても、アカミミガメによるカイツブリの営巣妨害、ヨシやガマなどの抽水植物の食害など、在来種への影響が確認されています。
今回はお客様の目にも付くところの設置となりますが、環境保全のため、何卒、ご了承ください。

以前、東保護区の外周樹林の一角には、ハリエンジュ(別名:ニセアカシア。北アメリカ原産。マメ科)の林がありました。
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【2013年の様子】
背が高く葉がついていない木々がハリエンジュです。
この樹木は、日本では環境省が「生態系被害防止外来種リスト」にて「適切な管理が必要な産業上重要な外来種(産業管理外来種)」の1つとし、「海岸林については、倒伏による危険や、クロマツに悪影響を及ぼさない管理が必要である」と記されています。

当公園では、各所に点在していますが、年々、ハリエンジュ含め、様々な高木が倒れているのが実態です。
例えば、最近、カワウのねぐらで何本も枯死したハリエンジュが倒れていたり、昨年まで3号観察小屋の対岸や左側でもハリエンジュが倒れていました。
3号観察小屋付近で池に倒れたものについては、サギ類やカモ類が休息に使っていましたが、枝葉が生えてきてしまったため、長期的に見て、生長に伴って落ち葉の堆積によるヘドロ化、陸地化も懸念されたため、撤去していました。
カワウのねぐらについては、人的被害や倒木からの再生も見られないことからそのまま鳥の止まり木として残置し、根から萌芽したものは適宜、クロマツ林の保全のために除伐もしています。

一方、東保護区の樹林のハリエンジュ林は、土塁の上に生え、高木化し、ツタが絡み、帆船の帆のように風を受けているものや、外周側の園内での倒木が何本かありました。
残っている高木ハリエンジュは猛禽類やツグミの群れの観察スポットではあったものの、今後、外周道路に倒れる危険性が考えられたため、仕方なく2021年3月に伐採をしました。

しかし、ハリエンジュは生命力が強く、切り株や根から萌芽(新しい芽が出ること)が生じます。
伐採跡地では、その萌芽に加え、アズマネザサ、クズ、センダングサ類など様々な植物が一気に広がりました。
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【萌芽したハリエンジュ】
そのため、レンジャーは、ハリエンジュ林の再生を抑制しながら、造園業者による作業上、やむなく一緒に伐採された在来樹木の萌芽や実生木を残し、育てることで、早めの樹林再生を試みてきました。
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【新たに生えてきたエノキ(=実生木)】
年に数回、選択的刈払いと、在来樹種の萌芽の株を間引く「もやかき」を実施しています。
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地点A 作業前 2023年6月の様子
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地点A 作業後
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地点B 作業前
D (2)
地点B 作業後

連日、保全管理レポートを投稿しました。
こうして様々な取り組みを意図して行っていることを皆様にも少しでもお伝えできればと思い、このコーナーを設けてきました。
「え、あれを伐採したの?」「伐るだけでなく、増やしてよ」というご意見・ご要望をお受けすることもありますが、意図した整備(観察・生態系・安全面)であることや、切り株からの萌芽を残したり、実生木を残し、時に移植したり、補植したりする取り組みも行っております。
今後もその時の状況に合わせ、適宜、整備が続くことになりますが、ご理解のほど、よろしくお願いいたします。

2018年頃からは、通常の管理作業の合間に草地やヨシ原、湿地の藪を覆うクズなどのツル植物の除去、湿地再生、草地再生に努めてきました。

例えば、眺望ゾーンも兼ねたネイチャーセンター横のミニ生態園周りは、小さなお子様でも水辺が観察できるように目線にまであったクズ原を除去し、草丈の低い草地(低茎草地)や湿地(休耕田模倣地)への転換を行ってきました

ミニ生態園から東淡水池の眺望も変わりました。
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以前の様子
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最近の様子

ミニ生態園にある東保護区入り口も景観が変わりました。
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以前の様子
A (2)
最近の様子

保護区内もクズ原を整備して、数年をかけてオギ、ススキの茅場へ転換しました。
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保護区内の管理道周辺の様子

もちろん、クズは在来種で、クズを利用する生き物もいるので、全て無くす考えはありません。
眺望ゾーンとしての視界確保をすべき所や、茅場として再生できる可能性がある所でのみ除去をして、林縁にあるクズによる「マント群落」は保存してあります。
※管理作業をする際は、既存の管理計画に加え、①お客様目線(観察支障の有無など)、②生き物目線、③安全管理を軸としています。

また、都内では減少傾向にあるされ、東京都レッドリスト2020見直し版(区部)で絶滅危惧IA類(CR)のセッカ、絶滅危惧IB類(EN)のホオジロを誘致すべく、多摩川河口域と同様の草地へ転換するという狙いもあります。

その結果が通じているのか、1990年から現在(昨日2024/3/26)までのデータを見ると、以下のようなグラフが出ました。
sekka2
セッカの観察日数
b26ba6e4
セッカ
hoojiro
ホオジロの観察日数
32a6645e
ホオジロ
どちらも似たような傾向が出ていますが、最近になって観察できる日が増えてきています。
※開館日のレンジャーによる確認の有無の集計です。

減っていた期間は、東保護区内のヨシ原を泥湿地と調整池に工事した頃から減少しているようにも見えますし、当時の気象条件(多雨で草地水没?)、管理対象の違い(湿地、水辺優先?)、あるいはクズ原が拡大したためか、などと推測もできます。

いずれにしても、観察日数が増えてきているので、結果としては順調のようです。

なお、草地転換のため、樹林や藪へと遷移が進んでしまったところを一時的に除去することがあります。
例えば、今冬に実施した前浜干潟側の生垣剪定と実生木伐採も、育ちすぎた生垣の下に実生木が増え、それらが日陰を作り、ヨシ原が減ってきていたため、今回、造園業者さんに整備していただきました。
次第に生垣や切り株から徒長枝が伸び、ゆくゆくは、拡大したヨシ原と所々にある灌木の景色になればと考えております。
基本的には、「今年はここ。来年はここ」というように、例えばヨシ原でもゾーニングをしながら、手を入れて、全てを無くすようなことはしないようにしています。

こうした作業、整備で観察のご不便をおかけすることがあるかも知れませんが、ご理解のほど、よろしくお願いいたします。

現在、潮入りの池と前浜干潟の間にあるコアジサシ繁殖誘致のための砂礫地の整備を進めています。

整備と言っても、毎年恒例の除草作業と周辺のヨシ刈りです。
B (1)
地点A 作業前
B (2)
地点A 作業後
A (1)
地点B 作業前
A (2)
地点B 作業後
防草シートを敷いた上で砂利が敷かれていたのですが、年々、土ぼこりが溜まって、そこに草が生え、実生木も生える上、防草シートの下からもヨシ、オギ、ススキ、残っていたハリエンジュが生えてシートを貫き、持ち上げ、それをカラスが引っ張り…という現状があります。

一方で、すぐに何らかの改修ができませんし、整備をせず、草丈の高い草地や、実生木やハリエンジュなどの樹林に遷移してしまうとコアジサシ、過去に繁殖事例のあるコチドリも利用しにくくなります。

コアジサシ自体、昨年はほとんど飛来していませんでしたが、再び多くが飛来しても、利用できる場がなければ利用できないので、今できる整備に努めています。
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アメリカセンダングサというタネが衣類にくっつく「ひっつき虫」で、手袋や衣類の隙間に入ると痛くて厄介な草が主に生えています。
それを抜いて、山にして、抱えるか、クズで作った紐で縛って砂礫地の外に搬出しています。
以前、一時期はその草の量の多さゆえに効率化を目指してトラクターや刈払機も導入しましたが、今回は結局、草抜きが一番きれいで、回収もしやすいということになり、草抜きをメインで作業をしています。
昨秋に前浜側の砂礫地だけ除草が済んでいたので、その分、負担が少ないこともあります。

今後も試行錯誤を繰り返しながら、より効率的な保全整備を目指し、コアジサシ、コチドリの繁殖成功を期待したいものです。
作業をしていることで観察の支障となることもあるかも知れませんが、ご理解のほどよろしくお願いいたします。

【砂礫地関連の過去の投稿】
・2023年05月11日 コアジサシのデコイを設置しました
・2022年04月28日 コアジサシのデコイを設置しました
・2021年10月16日 砂礫地を整備中です

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